はつじょがいく!
廿日市市宮内にある一枚板のテーブル工房きくらさんにお邪魔しました。
常藤辰徳さんにお話をお聞きしました。
北海道の学校で家具を学ぶ
昭和31年に常藤さんのおじいさんが、家具を製造販売する常藤家具を創業。来年60周年を迎えられます。
時代にあわせて作る家具も変わり、お父さんが一枚板のテーブルの制作を始め、現在は常藤さんが中心となって制作、販売をしています。
中学生の時に家具の道へ進もうと決心された常藤さんは、卒業後、北海道おといねっぷ美術工芸高等学校という家具コースのある学校に進学されました。
木の性質といった基本的なこと、家具の加工、デザイン、図面の引き方などを学んだそうです。
高校卒業後は家具の専門学校に進学。家具屋をしている工房の講師の元で2年間勉強し、建具屋さんでのお仕事を1年経験。21歳の時に廿日市に戻ってこられました。
世界に一つだけ。オーダーメイドの一枚板テーブル
店内に入ると木の良い香りがし、存在感のある一枚板のテーブル、そしてテーブルになる前の一枚板が並べて置かれています。
一枚板は、樹齢100年、200年の大形木を縦にスライスしたもの。テーブルにできるサイズまで成長した大形木は一山で一本とれるかどうかといった、大変希少価値の高いものです。
一枚板はとても個性があるので、同じ木を使っても、毎回違うものを作っているような感覚なのだとか。
一枚一枚、その木の個性や性質を見分けながら、どうやったらよりこの木がきれいに仕上がるかと見極めながら作るところに奥深さを感じるのだそうです。
お客様は展示してある木を見ても、どういう仕上がりになるかなかなか想像ができないもの。納品した時に、その手触り、質感に驚かれるのだとか。
世界にひとつだけのテーブルを見て喜んでくださるお客様の姿にやりがいを感じるそうです。
仕入れからメンテンナンスまできくらのこだわり
一枚板を仕入れてから納品まで一年半かかるそうです。
水分を大量に含んだ板は乾燥に時間がかかるため、お客様には乾燥を終えた木から選んでいただくようにしています。
ゼロからお客様の要望を聞いて、木を選び、幅、長さ、足の高さ、仕上がりなどを細かく打ち合わせします。
制作工程の中で常藤さんが最も時間をかけているという手鉋(てがんな)での仕上げは、木目、模様がはっきりときれいに出るそうです。
機械でやると半日ですむところ、手鉋だとサイズや板によっては1週間以上かかることもあるのだとか。
塗装には100パーセント自然由来のものから作られたオイルを使用しています。人の体に優しく、木にとっても良いそうです。後のお手入れがしやすい塗装です。
注文してから約3か月、丁寧な工程を経て納品されます。
一枚板のテーブルは一生もの。長く使っているうちに汚れや傷が入ってきます。また木の性質として反ったりすることもあるので、納品後のメンテナンスもお願いできます。可能な場合はお客様宅で、機械が必要なときなどは持ち帰ってきれいに加工します。
SNSで作業の様子も発信されています。
人気のトチ 希少価値の高い杢板
今一番人気があるのがトチなのだそうです。
国産材で多く生えているもので、大形木になりやすく、表面が他の木に比べて白いのが特徴です。線が細かいので表面につやがあって一般的な木とは若干質感が違うものです。
中でも杢(もく)が出ているものが人気なのだとか。
杢とは、木目とは違い、横に出る特殊な独特な模様で、その模様の出方で木の値段が変わってくるそうです。
端材をいかした小物作り
きくらさんでは、テーブルを作る時に出てくる端材を使って、小物の制作、販売もしています。
常藤さんのお父さんが主に商品を考え、作られるのだとか。
温かみのある器や、ペン立て、スマートフォン立て、ランプシェードにペットのお仏壇まで。
お客様からの要望を受けて作るものもあるそうです。
市産材を使った作品で木のまち廿日市をPR
廿日市の木材業界をもっと元気にしたいという常藤さん。
昔から廿日市ではひのきが植林されており、その間伐材がたくさん出てきているのだそうです。
そういった間伐材を使って、小物を作って販売していこうと、しごと共創センターと協力して活動していらっしゃいます。
廿日市の市産材を使って廿日市の家具職人が作った小物ということで木のまち廿日市をPRし、県内外の人に広げていきたいと考えているそうです。
ヒノキの間伐材で作ったイスは廿日市にオープンした店舗に納入されました。
広島県内だけでなく、関西や九州からもきくらさんのテーブルを求めてご来店されるのだそうです。
一生もの、一点ものの一枚板のテーブル。
お客様の喜ぶ姿を楽しみに、自然が偶然に作り出した木の美しさ、力強さを最大限に引き出す常藤さんです。
東園 恵
一枚板のテーブル工房 きくら
住所/広島県廿日市市宮内4188-2
電話/0829-39-2479
営業時間/10:00から18:00
定休日/木曜日
https://www.kikura.info/
Writing:Kawasaki Kyoko