インバウンド観光に関わる事業者に伴走し一緒に目標を達成する|レマー佳緒里

はつじょがゆく!

廿日市市を拠点に活躍するインバウンドプロデューサーのレマー佳緒里さんにお話を聞きました。

インバウンドプロデューサーとは

佳緒里さんはカナダ人のご主人、ベンジャミン・レマーさん(通称くまちゃん)と一緒にインバウンドプロデューサーとして活動しています。

インバウンド観光に関わる事業者さんの叶えたい目標をどうやったら達成できるか、具体的な方法を提案して達成できるまで伴走しています。

人間関係に行き詰まり、日本を飛び出す

佳緒里さんは子どもの頃からX JAPAN、特に小学生の時に亡くなったHIDEさんのことが大好きだったそうです。

「彼の生き方をもっと知りたいと思って生きてきました。彼が障がいのある子に関わっていたことに影響を受けて、療育士になるために短大の保育科に進学したり、音楽活動をやったりしました。」

音楽もやりきり、療育士も制度が変わって保育士では関われることに限界があることを知った佳緒里さん。

なにより、分かり合いたいと思う人たちと分かり合えないというつらい人間関係の中で苦しんでいた時でもありました。

そんなとき思ったのが「HIDEが書いていた英語の詞の意味がわかったら、見える世界が変わってくるかもしれない。」ということでした。

短大卒業後、佳緒里さんは20万だけ握りしめ、住むところも何も決めずにオーストラリアに飛び立ちました。

ホームレスも経験したオーストラリアでの生活

ワークングホリデーでオーストラリアに渡り、佳緒里さんは日本食レストランで食器洗いの仕事を始めました。

まったく英語ができなかったため、その仕事をやめてからは、街で知り合った人たちとホームレス生活を2カ月経験しました。

冬はマイナス5℃、夏は35℃にまでなるような町の馬小屋の中で、コンロを持ち込んで自炊していたそうです。

そんなハードな日々も、楽しかったと振り返ります。

「日本だとどちらかというと、はねのけられる感じだったんですけど、向こうに行ったら、人が寄ってくるんです。英語もしゃべれないやせた日本人が、すみっこで本読んでるから、興味を持ってくれたみたいで。」と佳緒里さん。

「英語がしゃべれなかったけど、『お前おもしろいからとにかく話を聞かせてくれ、かおりがどう思っているのか聞かせてくれ』って言われて。」

こちらが頑張って話そうとするのを理解しようとしてくれるのが、毎日新鮮だったと言います。

その後新しい仕事をしながら、毎日必死に英語を勉強した佳緒里さんは、1年後に帰国。

英会話スクールで講師の仕事をしていた時に、夫くまちゃん(ベンジャミンさん)と知り合いました。

二人で手掛けた廿日市のインバウンドプロジェクト「HERE」

くまちゃんは、アートが好きで家具の製造デザインから始まり、地域デザインにも関わってきました。

ビジュアルで、見せることでブランディングすることを仕事にしています。
https://www.futurecmnd.com/

廿日市市のインバウンドの取り組みのひとつとして始動した「HERE」プロジェクトでは、佳緒里さんとくまちゃんの二人で廿日市の12事業者の紹介パンフレットとサイトを作りました。

H=HIROSHIMA
E=EAT
R=RELAX
E=EXPERIENCE

タブロイド紙風のパンフレットには見せる工夫がいっぱい

HEREパンフレットは新聞紙を思わせる素材の紙を使っています。

外国人にとって、タブロイド紙には新しい情報が載っているというイメージがあるのだとか。

そのため、あえてつるつるとしたきれいな紙を使わず、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも新聞のような素材を選びました。

このパンフレットが半分の状態、四つ折りの状態と、どのように置かれても見た人の興味を引くことができる構成になっています。

また宮島の象徴でもある鳥居は工事中。

迎える事業者にとっても、楽しみに訪れる観光客にとってもマイナスである部分をあえてイラストで表現し、じゃあ何が廿日市でできるのか、楽しめるのかを、その先のページで紹介するつくりになっています。

単なるお店紹介に終わらせない
事業者の価値感と観光客の価値感を引き合わせる

紹介記事を書くにあたり、大切にしたのは単なるお店の紹介に終わらせないことでした。

店主がどんなことにこだわり、どんな思いでやっているのかをしっかりと聞き取り、そのお店の価値観を前面にだし、その価値観にあう外国人に来店してもらえるようにしています。

そのためクーポンもつけず、料金の案内も載せていません。

またHERE専用サイトでは動画での紹介もありますが、ここに外国人はいっさい登場しません。
https://here-magazine.jp/

自治体が作成するものに特定の人種の人しか出ないということに対して、外国人が非常にシビアであるためです。

HEREプロジェクトが目指すコンセプトに徹底的に沿ったブランディングをしています。

「人間関係に困っている人、アイデンティティに悩んでいる人、そんな人たちが、一人として寂しいと感じることのない廿日市になるように、大人も子どももみんな巻き込んでやっていけたらいいなと思います。」と廿日市への思いを話してくださいました。

東園 恵

FMはつかいちで放送されました

 

 

Writing:Kawasaki Kyoko