ハイブリッドアイスで牡蠣の時間をとめる|株式会社ケンスイ

はつじょがいく!

廿日市市地御前にある株式会社ケンスイさんにお邪魔しました。

代表取締役社長の川崎健さんにお話をお聞きしました。

牡蠣養殖業を母体とし、冷凍部門会社を立ち上げる

株式会社ケンスイは、生牡蠣の養殖、販売を行う川崎水産を母体としています。

1964年に川崎さんのお父さんが川崎水産を創業され、川崎さんは高校卒業後に跡を継がれました。

2017年3月に牡蠣の冷凍部門会社として、株式会社ケンスイを設立。牡蠣を知り尽くした生産者が、海から揚げたばかりの牡蠣のおいしさをそのまま食卓に届ける新しい方法を編み出しました。

-21.3℃のハイブリッドアイスで牡蠣を瞬間冷凍

魚や牡蠣といった水産物は採ったらすぐに売らないといけないものです。しかし需要と供給のバランスがとりにくく、今は海外からの水産物も多く出回り、食べられない物は捨てられるというフードロスが気になっていたと川崎さんはおっしゃいます。

海の資源をいるだけ採って持って帰るようにすれば、次に海に行ったときにはまた増えている。

海にある資源をむやみやたらと陸に持ってあがらないようにするために、また海にある状態をどう時間をとめてゆっくり売っていけるか、生産者や漁師ができることはなにかと考え、15年くらい前から冷凍という方法に着目していたのだそうです。

友人である、冷凍機製造のプランテックインターナショナルの廣兼社長と協力し、牡蠣の新しい冷凍方法、ハイブリッドアイス冷凍を開発されました。

生きたものを瞬間的に凍らせることができるハイブリッドアイス冷凍。

普通は空気を冷やす送風式で凍らせますが、このハイブリッドアイス冷凍は、牡蠣を真空パック後、23.5%の限界高濃度塩水をマイナス21.3℃のシャーベット状にして流し、急速冷凍するという方法です。

液体と空気の熱伝導率を比べた場合、液体は空気の100倍。シャーベット状のもので冷凍する方が送風よりも断然早く冷凍ができるということです。

マイナス21.3℃の空気で牡蠣を一粒凍らせようとした場合、30分から40分かかるところ、ハイブリッドアイスだったら、約2分で凍らせることができるのだそうです。

液体の熱伝導率に着目した方法で、瞬間的に凍らせることで、海から揚げたばかりの味と香り、本当の牡蠣の味を消費者の方に知ってもらうことができると川崎さんはおっしゃいます。

この方法で、第25回ひろしまベンチャー助成金奨励賞銀賞を受賞した川崎さん。

自分の考えてきたことをいいんじゃないと認めてもらえたこと、そこにまたやりがいを感じ全国へ向けて発信を続けていく。そうすると、漁業者同士でやりたいことを共有していく、そんな出会いにつながり、ワクワクするのだそうです。

情報の提供でリピートを増やす

生食用の牡蠣はハーフシェルと言って、ふたを取ってパック後、冷凍します。解凍すればそのまま生で食べることができるのですが、その解凍方法の案内もつけて販売しています。

また加熱用のむき身については、解凍方法はもちろん、料理のレシピも一緒につけています。

今後はスマートフォンでQRコードを読み取れば、調理方法、ケンスイの会社情報、またこの牡蠣をどうやって作って、どう処理して、途中の温度管理はどうなっていたかといった流通情報が分かるシステムを導入するそうです。

そういった情報をお客様に提供することでリピーターを増やすことにつなげたいと考えていらっしゃいます。

地元の人にこそ知ってほしい、豊かな海に恵まれた廿日市

日本には四季があるため、世界の中でも豊かな海に恵まれています。

廿日市は海と山に囲まれた街。豊かな山で育まれた栄養分が川を通って海へ流れ出るため、廿日市の牡蠣は生育がよく甘みが強い、そして香り優しく育つのだそうです。自然が本当にバランスよく循環されているのが廿日市の海だとおっしゃいます。

廿日市の人にこそ、こんなにも恵まれた海を持っているんだと誇りに思って欲しい、そんな思いで小学校で話をしたり、社会見学を受け入れたり、大学生を呼んで自然に関する食育をされています。

また、自然の本来の味が分かる食べ手を育てることも必要なのではないかと考えられているそうです。

日本各地の浜とつながりを持って

川崎さんはこの冷凍技術をもっと研究して日本中に広げていきたいそうです。

そして全国の浜がその良さを持ち出し、ネットワークを使って食の情報を発信していく、ひいてはそれが流通の改革につながり、小売店などへの教育にもなるのではないかと考えていらっしゃいます。

漁業者自体も続けようとしているところは若返りをはかっており、そういう人たちと連携しながら続けられる水産業を目指して新しいことをどんどんやっていきたいそうです。

 

冷凍技術は環境のこと、豊かな食糧事情について考えるのによい材料になると思うとおっしゃいます。

水産業に携わる方々と出会い、やりたいことを語り共感しあう。水産業の未来のために仲間たちと何ができるか、これからのことを本当に楽しそうに話してくださいました。

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東園 恵


株式会社ケンスイ
住所/広島県廿日市市地御前5-3-17
電話/0829-36-2345
お問合せ対応時間/10:00から16:00
定休日/日曜日
http://kensui-kengaki.co.jp/

川崎水産直売所
住所/広島県廿日市市宮内1052
電話/0829-39-8793
営業時間/10:00から18:00
定休日/日曜日

《株式会社ケンスイ》

《川崎水産直売所》

Writing:Kawasaki Kyoko